まずは次の問題を見てください。皆さんならどのように解きますか?
[例題1]2016人文学部(心理人間学科・日本文化学科) ( )内に入れるのに最も適当なものを、(A)~(D)のうちから一つ選びなさい。 English ( ) at this elementary school since 1904. (A) was taught (B) has been taught (C) taught (D) is taught |
皆さんはこの問題を解くとき、どのような思考を辿って解答を導きますか?今回はパターン別の解法を学ぶ前段階として、解答までの道すじを近道する方法について学びたいと思います。
おおかたの受験生は、問題文を頭から和訳しながら読んで大まかな意味を把握したあと、選択肢を(A)から順番に吟味していく解法をとります。もちろん、この方法でも解けるのですが、問題によっては少しばかり時間が余計にかかってしまいます。
文法/語法問題ゼミでは、ライバル達よりも早く解く方法を身につけるために南山大学で出題される文法/語法問題を16のパターンに分類していくのですが、その第1段階となるのが選択肢の吟味です。
1. 和訳をするより先に選択肢を見よう
問題文の和訳より先に選択肢を吟味するのは設問パターンを見抜くためです。その理由は、南山大学で出題される文法/語法問題は選択肢を見れば出題テーマがほぼ分かるからです。
選択肢を吟味して設問パターンを把握したら、正解への手がかりを問題文の中に探していくというのが基本的な流れです。
これらを念頭に、あらためて冒頭の問題を解いていきましょう。
[例題1]2016人文学部(心理人間学科・日本文化学科) ( )内に入れるのに最も適当なものを、(A)~(D)のうちから一つ選びなさい。 English ( ) at this elementary school since 1904. (A) was taught (B) has been taught (C) taught (D) is taught |
例題1から選択肢だけを抜き出してみます。
[①選択肢を吟味]
(A) was taught
(B) has been taught
(C) taught
(D) is taught
選択肢には動詞teachが(A)受動態(過去形)、(B)受動態(現在完了形)、(C)能動態(過去形)、(D)受動態(現在形)という形に変化して並んでいます。
能動態と受動態という2種類の態に加え、現在(完了)・過去という2つの時制があるので、この問題は『正しい態と時制を選ばせる問題』であると推測できます。選択肢からこの情報を得たら、態と時制を決定づける語句を意識しながら問題文を読んでいきます。
[②態と時制を決定する語句は?]
English ( ) at this elementary school since 1904.
Englishが主語になっているということで空欄内( )は受動態であると考えられます。なぜなら『英語が教える』ではおかしいですし、他動詞teachの目的語が空欄のあとに見当たらないからです。この時点で、選択肢から能動態である(C)が除外されます。
態が受動態に決定したので、次に時制を決定する要素を探していきましょう…そうです「 since(~以来)」です。
前置詞sinceは通例、現在完了形と共に用いられるので時制は現在完了形となります。
以上から、受動態かつ現在完了形である(B)has been taughtが正解です。
[正解]
English has been taught at this elementary school since 1904.
(訳)この小学校では1904年から英語が教えられている。
なお、本問のパターンは第4講、5講で扱う『時制』『態』の混合パターンになります。
このように最初に選択肢を吟味し、論理的に解答を導くことで、時間短縮になるだけでなく自信をもって選択肢を選べるようになります。
2.和訳先行で解くことの弊害
英文の意味がわからないまま問題を解くのは不安ですから、手始めに問題文を和訳したい気持ちはよくわかります。実際、和訳してから文脈に合った語彙を選ばせる問題も多く出題されています。しかし、それでも最初に和訳することは止めましょう。弊害が2つあるからです。
問題文を最初に和訳することの弊害 1. 和訳する時間がかかる 2. 和訳することで問題の焦点がぼやける |
1.は自明ですので、ここでは2.について解説します。次の問題を考えてみましょう。
[例題2]2016外国語学部(英米学科)・総合政策学部(A方式) ( )内に入れるのに最も適当なものを、(A)~(D)のうちから一つ選びなさい。 It’s going to rain this weekend, so let’s cancel our ( ) of downtown New York. (A) trip (B) travel (C) journey (D) tour |
まずは「最初に和訳をする方法」で解いていきましょう。
[①問題文の意味を把握する]
It’s going to rain this weekend, so let’s cancel our ( ) of downtown New York.
訳「今週末は雨になるから、ニューヨーク市街への( )は中止にしよう」
問題文の意味が把握できたので、あとは空欄にぴったりな選択肢を選ぶだけです。それでは各選択肢の意味を確認していきましょう。
[②選択肢の意味を確認]
(A) trip → (一般的な)旅行
(B) travel → (長期の)旅行
(C) journey → (長期の)旅行
(D) tour → (周遊/観光)旅行
なんと全てが『旅行』という意味をもっています。これではどれを選んでも日本語訳が同じになってしまいますね。
実は、これらの単語にはかっこ書きしたように微妙な使い分けがあるのですが、仮にそれを知っていたとしても解答を一つに絞り切ることはできず、行き詰ってしまいます。
このように、和訳先行で解き始めた受験生は次の手がかりを思いつくか、問題を捨てる決断をするまで、時間を無駄にしてしまいます。この無駄を省くためにも「最初に選択肢を検討する方法」で解いていきましょう。
[①和訳より先に、選択肢を確認]
(A) trip → (一般的な)旅行
(B) travel → (長期の)旅行
(C) journey → (長期の)旅行
(D) tour → (周遊/観光)旅行
選択肢に「『旅行』という単語(類義語)が多いなあ」と気づかれたでしょうか?
同じ意味をもつ類義語でも、個々の語法はそれぞれです。本問では選択肢個々の語法が論点になっている可能性を考えながら問題文を検討します。
[②名詞の語法の手がかりに注意しながら読むと…]
It’s going to rain this weekend, so let’s cancel our ( ) of downtown New York.
⇒ofが手がかりになりそうだぞ!!
訳「今週末は雨になるから、ニューヨーク市街への( 旅行 )は中止にしよう」
本問では空欄のあとに続く前置詞ofに着目してみます。なぜなら、選択肢が意味の上では代替可能なので、文法/語法で区別するしか方法がないからです。
[③文法/語法の知識で選択肢を判別する]
4つの選択肢(A)trip、(B)travel、(C)journey、(D)tourの中で「~への旅行」という句を作る場合、
「 ( )+of+場所」
の形で用いられる語法をもつものは、(D)のtourだけなので、正解は(D)tourになります。
[正解]
It’s going to rain this weekend, so let’s cancel our tour of downtown New York.
(訳)今週末は雨になるから、ニューヨーク市街へのツアーは中止にしよう。
その他の選択肢は、
a trip to New York (ニューヨークへの旅行)
travel to England (英国への旅)
a journey to Kyushu (九州旅行)
のようにtoが用いられます。
この設問のテーマは「~への旅行」という句を作る、名詞の語法であるのに、最初に和訳をしたことで設問の焦点がぼやけてしまいました。
始めに選択肢を吟味して分類する重要性、さらに、問題を和訳に頼らず解くことの重要性を理解していただけたでしょうか?
次回からはパターン別に解法を解説していきますが、文法/語法問題では常にこの2つを意識するようにしてください。