第16講『文脈』

文法/語法問題ゼミも今回が最終回になりました。最後まで、もうひと踏ん張りです。がんばりましょう。

『文脈』問題とは、今までに扱った出題パターンとは異なり、文法/語法上、誤りのない選択肢の中から文意にもっとも相応しいものを選ばせる問題をいいます。いわば、文法/語法問題ではなく語彙の問題と言えます。
選択肢の特徴としては、同種の品詞が並んでいることが多いのですが、色んな出題形式があるので、あまり先入観を持たない方が良いでしょう。

文法/語法問題の基本的な解き方として、今までは、選択肢の分類をしたあと、本文中に文法的なヒントを探し[構文的アプローチ]正解候補が複数あるときは文意に合う方を選ぶ[文脈的アプローチ]という方針で解いてきました。

今から学ぶ『文脈』パターンも基本は同じですが、問題文の文脈を読み取り、最もふさわしい語を選択肢から選ぶことがメインになりますので、文法や語法の知識よりも語彙力/読解力が重視されます。

選択肢がすべて形容詞の場合
それでは、基本問題で『文脈』問題の解き方を学んでいきましょう。

[例題1]2015外国語学部(スペイン・ラテンアメリカ、フランス、ドイツ、アジア学科) 法学部
(      )内に入れるのに最も適当なものを、(A)~(D)のうちから一つ選びなさい。
Larry always comes to work late. If he is not more (      ), he may lose his job.
(A) accurate
(B) conscious
(C) punctual
(D) strict

『文脈』問題でも、取り掛かる時の手順は今までと同じです。まずは選択肢の分類を行いましょう。

[選択肢の分類]
(A) accurate形容詞「正確な」
(B) conscious形容詞「意識している」
(C) punctual形容詞「時間を守る」
(D) strict形容詞「厳しい」

『正確性』に関する形容詞が多いので、まずは形容詞の『語法』問題である可能性を考えつつ、構文的に解けないかチェックします。

[①構文的アプローチ]
Larry always comes to work late. If he is not more (      ), he may lose his job.

文法/語法問題であるならば、ヒントは赤字のifの中にあるはずですが、(A)~(D)すべてに叙述用法があるので、文法/語法的にすべて正しく、ここから正解は選べません

この問題のように、問題文から文法/語法上のヒントを得られないとき(=すべてが文法的に正しいとき)はすぐに頭を切り替えて、文脈からふさわしい語を選ぶ方針に変更します。これを文脈的アプローチによる解法と呼んでいきます。

[②文脈的アプローチ]
問題文を和訳していきましょう。

Larry always comes to work late. If he is not more (      ), he may lose his job.
(訳)ラリーはいつも仕事に遅れて来る。もっと(      )でないならば、仕事を失うかもしれない。

ラリーは常に仕事に遅刻しているのですから『時間の』正確性を話題にしていると考えられます。よって、選択肢の中から文意に沿うのは(C)punctual(時間を守る)です。

[正解]
Larry always comes to work late. If he is not more (C)punctual, he may lose his job.

(訳)ラリーはいつも仕事に遅れて来る。もっと[ (A)正確, (B)意識的, (C)時間を守る, (D)厳しく]でないならば, 仕事を失うかもしれない。

このように文脈的アプローチによる解法は、文法的に攻略できない問題の第2段階として行います
『文脈』パターンという名称は、文脈的アプローチがメインになった問題のことを便宜的に分類しているだけです。

過去問をこなしていけば実感できますが、南山英語では、文脈的アプローチを用いて正解を導く文法/語法問題が非常に多いのが特徴になっています(厳密には『文法/語法』問題ではないのですが…)

『文脈』パターンは語彙力読解力がメインなので、文法/語法問題集をどれだけやりこんでも解けるようにはなりません。
多い時は20問中、5問ぐらいが文脈問題だったりするので、英語に自信のある受験生でも、南山の文法/語法問題では意外に得点できなかったりします。
南山英語にはクセがある』と言われる所以はこのようなところにも一因があるのかも知れません。

選択肢がすべて動詞の場合

[例題2]2015外国語学部(スペイン・ラテンアメリカ、フランス、ドイツ、アジア学科) 法学部
(      )内に入れるのに最も適当なものを、(A)~(D)のうちから一つ選びなさい。
One of the most important things that you can do in life, Ronnie, is to (      ) an education.
(A) acquire
(B) realize
(C) achieve
(D) accomplish

文脈的アプローチによる解法練習のために選んだ問題ですが、まずは構文的に解けないかを検討していきます。

[選択肢の分類]
(A) acquire他動詞「~を身につける」
(B) realize他動詞「~を実現する」
(C) achieve他動詞「~を成し遂げる」
(D) accomplish他動詞「~を成し遂げる」

選択肢はすべて『達成』に関する他動詞ですね。まずは『語法』問題の可能性を調べるため、本文をチェックします。

[①構文的アプローチ]
One of the most important things that you can do in life, Ronnie, is to (      ) an education.

空欄に入る他動詞は目的語を1つ(an education)とるだけなので、語法問題ではなさそうです。
すべて文法的には正しいので、すぐに文脈からアプローチする方針に切り替えましょう。

[②文脈的アプローチ]
One of the most important things that you can do in life, Ronnie, is to (      ) an education.
(訳)ロニー、人生において君ができる最も大事なことの1つは、教育を(      )することだよ。

空欄に入るべき動詞の目的語がan education『教育』です。
『教育』とは(B)実現したり、(C)達成したり、(D)成し遂げるものではなく、(A)「身につける」ものなので(A)acquireが最適です。

ロングマン英英辞典にacquireは『to gain knowledge or learn a skill(知識を得たり、技能を習得すること)』と書いてあります。知識や技能を身につけるイメージですね。

選択肢がすべて副詞の場合

 [例題4]2016人文学部(キリスト教学科・人類文化学科) 経済学部
(      )内に入れるのに最も適当なものを, (A)~(D)のうちから一つ選びなさい。
Scientists believe that the Milky Way galaxy contains (      ) 100 billion stars.
(A) closely
(B) approximately
(C) significantly
(D) measurably

[選択肢の分類]
(A) closely副詞「密接に」
(B) approximately副詞「おおよそ, 約」
(C) significantly副詞「有意義に」
(D) measurably副詞「測定可能に」

今回はすべて副詞です。まずは構文的アプローチで解けないか問題文の構文をチェックしてみます。

[①構文的アプローチ]
Scientists believe that the Milky Way galaxy contains (      ) 100 billion stars.

副詞が入るべき空欄前に動詞contains後ろには数詞100 billionがあります。副詞は動詞や形容詞(数詞も含む)、副詞、文全体を修飾します。すべての選択肢は文法的に正しく、正解をしぼれないので、文脈的アプローチに切り替えます。

[②文脈的アプローチ]
Scientists believe that the Milky Way galaxy contains (      ) 100 billion stars.
(訳)科学者たちは、天の川銀河には(      )1000億の星が含まれていると考えている。

空欄は100 billionという大きなを修飾していると考えられるので, (B)approximatelyおおよそ」が適切です。

(A)はcloselyではなくclose toなら「~近く」という意味で空欄に入ることができます。

Scientists believe that the Milky Way galaxy contains close to 100 billion stars.
(訳)科学者たちは, 天の川銀河には1000億近くの星が含まれている考えている。

選択肢がすべて名詞の場合

[例題5]2016外国語学部(英米学科)・総合政策学部(A方式)
(      )内に入れるのに最も適当なものを、(A)~(D)のうちから一つ選びなさい。
Takashi gave me some useful (      ) about job hunting.
(A) opinion
(B) suggestion
(C) advice
(D) recommendation

本問もまず選択肢の分類をしていきます。

[選択肢の分類]
(A) opinion名詞「意見」
(B) suggestion名詞「提案」
(C) advice名詞「助言」
(D) recommendation名詞「推薦」

選択肢はすべて名詞で、意味の近い語が並んでいますね。
似たような意味のものがあるときは、まず語法』問題の可能性を考えます。

[①構文的アプローチ]
Takashi gave me some useful (      ) about job hunting.

空欄あとのaboutにつながる語法をもつ選択肢が1つであれば話は早いのですが、残念ながら、すべての選択肢aboutにつながることができます。
文法/語法的なアプローチがだめなら、すぐに文脈的アプローチに切り替えましょう。

[②文脈的アプローチ]
Takashi gave me some useful (      ) about job hunting.
(訳)タカシは仕事探しについて有益な[(A)意見, (B)提案, (C)助言, (D)推薦 ]をいくつか私にくれた。

求職中に役立つのは友人の意見提案よりも役に立つアドバイスですから、(C)advice助言」が適切です。

最後は選択肢がすべて前置詞の場合です。『前置詞』パターンでも、語法の知識で解けない問題は、文脈に相応しい意味をもつ前置詞を選びます[文脈的アプローチ]

『句動詞』『前置詞』パターンは文脈問題の1形態

[例題3]2015外国語学部(スペイン・ラテンアメリカ、フランス、ドイツ、アジア学科) 法学部
(      )内に入れるのに最も適当なものを、(A)~(D)のうちから一つ選びなさい。
When he was younger, John got very little exercise. Then, at the age of 50, he (      ) tennis. He is quite a good player now.
(A) took up
(B) took out
(C) took over
(D) took in

選択肢を眺めると、今回は「take前置詞[副詞]」からなる句動詞が並んでいますね。「これは句動詞パターンでは?」と思ったかた、正解です。実は句動詞パターンは文脈問題の特殊な形です。基本動詞が共通なので、見かけは似ていますが、個々の句動詞がもつ意味はまったく違います。ネイティブから見たら「これが大学入試の問題なの?」って感じでしょう。

[句動詞パターン解答法]
1.大まかな内容を把握する
When he was younger, John got very little exercise. Then, at the age of 50, he (      ) tennis. He is quite a good player now.
(訳)若いころ、ジョンはほんの少ししか運動をしなかった。それで、50歳のときテニスを(      )。今ではとても上手である。

2.選択肢の意味を把握する
(A) took up「(時間・場所など)を占める/(趣味などを)始める」
(B) took out「(食べ物)を持ち帰る」
(C) took over「~を引き継ぐ」
(D) took in「~を吸収する」

3.選択肢の中から文意に最もふさわしいものを選ぶ
When he was younger, John got very little exercise. Then, at the age of 50, he (      ) tennis. He is quite a good player now.
(訳)若いころ、ジョンはほんの少ししか運動をしなかった。それで、50歳のときテニスを[ (A)始めた, (B)持ち帰った, (C)引き継いだ, (D)吸収した ](      )。今ではとても上手である。

選択肢の訳語を当てはめていくと、答えは一目瞭然ですね。ただし、このように解けるのは句動詞パターンに対して、きちんと準備した受験生だけということをお忘れなく。

[例題6]2016経営学部・理工学部(A方式)
(      )内に入れるのに最も適当なものを、(A)~(D)のうちから一つ選びなさい。
Please pay for your purchases (      ) the cash register over there.
(A) at
(B) on
(C) in
(D) to

選択肢がすべて前置詞の場合は、まず空欄前後に前置詞とセットで使われる語がないかチェックします。例えば、
She is looking forward (      ) the concert.
という文の空欄に前置詞を入れる場合、look forwardとセットで使われるtoが入ります。

[①構文的アプローチ]
Please pay for your purchases (      ) the cash register over there.

自動詞payforと結びついているので、空欄との相関関係はなさそうです。すぐに頭を切り替えて、文脈からアプローチします。

[②文脈的アプローチ]
Please pay for your purchases (      ) the cash register over there.
(訳)あそこのレジ(      )買い物の支払いをしてください。

支払いをするのは、レジという店の中の1点ですから『場所の1点を表す』(A)atが適切で、これが正解になります。

まとめ
『文脈』問題は、選択肢から分類されるパターンではなく、文法/語法の知識だけでは正解が1つに定まらない問題のことを言います。
『構文的アプローチ』『文脈的アプローチなどと大仰な名称をつけて解説してきましたが、難しく考えず、要は「文法/語法の知識で駄目なら内容に合う選択肢を選ぼう」ということです。
文法/語法問題ゼミは今回で終了です。南山英語の文法/語法問題のほとんどは、ここで学んだパターンに分類されます。あとは過去問を解いて実践力を磨いていきましょう。

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