1.南山英語攻略の基礎となる重要分野
南山大学では大問1で文法/語法/語彙に関する知識を用いて短文を完成させる問題が20問出題されます。この出題形式で15年以上出題されているので、21年度入試でも出題が予想されるでしょう。
この文法/語法問題で出題される語彙や文法/語法の知識は、空欄補充問題や誤り指摘問題などでも形を変えて出題される傾向があるので、文法/語法問題の攻略は南山英語の基礎となります。
南山英語の個別対策は、まず文法/語法問題から取り組むのが良いでしょう。
【例】文法/語法問題で出題されたテーマ(takeを含む句動詞)は空欄補充問題でも出題されている↓
【文法/語法問題】「takeを含む句動詞」 2018人文学部(キリスト教学科、人類文化学科) 外国語学部(スペイン・ラテンアメリカ、ドイツ学科) 経営学部 ( )内に入れるのに最も適当なものを、(A)~(D)のうちから一つ選びなさい。 These camping items don’t ( ) much room, so I think we only need one car. (A) take over (B) take in (C) take up (D) take on |
【空欄補充問題】「takeを含む句動詞」 2019外国語学部(フランス学科、アジア学科) 経済学部 ( 36 )に入れるのに最も適当なものを、(A)~(D)のうちから一つ選びなさい。 In addition, sheep and cattle have ( 36 ) much of the quokkas’ natural habit. (A) taken back (B) taken on (C) taken over (D) taken out |
2.出題傾向
2011~15年の5年間に出題された問題(500問)を出題分野別に分析したところ、次のような傾向がありました。
・文法…26%
・語法…21%
・語彙/イディオム…47%
年度や学部によって変動はありますが、語彙やイディオムに関する知識を問う問題が多く出題されることが南山英語の特徴になっています。
また、文法問題では特定の頻出分野が目立ちます。中でも完了形/助動詞/分詞/仮定法/倒置がよく出題されています。特に倒置は苦手な受験生が多いので注意が必要です。
3.文法/語法問題の解き方
まずは、実際に出題された問題をご覧ください(ちなみに、このタイプの問題は南山特有で、あまり文法/語法問題集には載っていません)。
[例題1] 2016外国語学部(英米学科) 総合政策学部(A方式) ( )内に入れるのに最も適当なものを、(A)~(D)のうちから一つ選びなさい。 It’s going to rain this weekend, so let’s cancel our ( ) of downtown New York. (A) trip (B) travel (C) journey (D) tour |
問題文は「週末は雨になるから、ニューヨーク市街への( )は中止にしよう」といった内容です。
それでは空欄に最適なものを選択肢の中から選んでいきましょう。
選択肢(A)tripは旅行、(B)travelも旅行、(C)journey も (D)tourもすべて旅行という意味の名詞です。
どれを選んで空欄に当てはめても、同じ意味の日本語訳になってしまい、おそらく南山対策をしていない受験生は戸惑うことでしょう。
手がかりを求めて問題文に戻りましょう。ヒントは常に問題文にあります。
空欄の後が “ of downtown New York ” となっています。
ひとくちに「旅行」といっても国内旅行に海外旅行、日帰り旅行もあれば長期に渡る旅行などいろいろあります。これらの単語にはそれぞれ細かい意味の違いがあるのでしょうか?
始めに問題文を和訳してはいけない
実は、皆さんに効率的な解き方を学んでいただくために、わざと回り道をするような解き方をしてきました。
この問題で迷った原因は最初に問題文を和訳して選択肢の中から意味の通じる単語を日本語で選ぼうとしたことにあります。
もちろん、この解き方で有効な場合もあります(語彙が問われている場合などです)。
しかし、この問題のように似たような意味の選択肢が並んでいるタイプの問題ではうまくいきません。
解答に戻りましょう。
この問題を解くためには空欄直後の of がポイントになります。
実は「旅行」という意味をもつ4つの選択肢 trip、travel、journey、tourの中で、
( )+of+場所 |
の形で用いられるのは(D)の tour だけなのです。
その他は、
a trip to New York travel to England a journey to Kyushu |
のように使われます。
この設問を作成した出題者の意図は「これらの単語の意味を知っていますか?」ではなくて「これらの単語の使い分けを理解していますか?」だったのです。語彙の問題ではなく、語法を問う問題だった訳です。
※名詞としてのtrip, travel, journey, tourには旅の種類や目的による微妙な使い分けがありますが、本稿では名詞句を作る際に用いる前置詞の観点で解説しました。
まず選択肢を吟味するクセをつけよう
受験は限られた時間の中での勝負ですから、和訳しなくても解ける問題は英文のまま内容を把握して、時間を節約しましょう。
和訳せず解けるかどうかを判断したり、設問の意図を素早く把握し、最短時間で回答するには、問題文の和訳よりも先に、選択肢の吟味をするクセをつけることが大切です。
過去問を解くときに練習してこの習慣を身につけておけば、解答時間の短縮につながるだけでなく、自信を持って選択肢を選ぶことができるようになります。
もう1問、練習として次の問題を解いてみましょう。
[例題2]2016外国語学部(英米学科)総合政策学部(A方式) ( )内に入れるのに最も適当なものを, (A)~(D)のうちから一つ選びなさい。 It’s no good trying to talk Sophie about her relationship with Alex. She refuses to ( ) the matter. (A) consult (B) discuss (C) speak (D) argue |
和訳したい気持ちをグッと堪えてください。練習ですから、まずは選択肢を吟味しましょう。
4つの選択肢consult、discuss、speak、argueはどんな属性を持っているでしょうか?
(A) consult「~に相談する」
(B) discuss「~を話し合う」
(C) speak「~を話す」
(D) argue「口論する」
すべて話すことに関する動詞が並んでいますね。
まだ和訳するのは我慢ですよ。
次に( )の直後にある the matter(その事柄)に注目です。
動詞の直後に名詞(目的語)がきているので、空欄に入る動詞は他動詞になると推測できます(※動詞直後の名詞が補語の場合は自動詞ですが、このような動詞の出題は限られています)。
ここで1つの選択肢を除き、残りが自動詞ならば話は早いのですが、残念ながら(A)~(D)すべてに他動詞の用法があります(もちろん他動詞1つ、自動詞3つであっさり解けてしまう問題もあります)。
手詰まりになってきましたが、攻め手はまだ残っています。本番ではこのような瞬時の切り替えが大事です。
(A)consult「~に相談する」が目的語に取る対象は専門家などの人です。
[例] consult a lawyer on the matter(その問題で弁護士に相談する) |
(C)speakの場合、目的語に取るものは日本語やフランス語などの言語です。
[例] She speaks good Japanese.(彼女は日本語を話すのが上手だ) |
(D)argueは他動詞では「~を主張する」という意味です。
ここで初めてargueを当てはめて問題文を和訳してみると、
It’s no good trying to talk Sophie about her relationship with Alex. She refuses to argue the matter.
(ソフィーにアレックスとの関係について話そうとしても無駄だよ。彼女はそのことを主張することを拒むから)
という意味になります。
the matter が指すものは「ソフィーとアレックスの関係」ですから文意に合いません。よって、argueは文法的には正しいのですが正解候補から外れます。
消去法で(B)discuss「~について話し合う」が一つだけ残りました。意味的にもこれが一番ふさわしい選択肢です。
結果的に問題文を和訳しましたが、選択肢を絞る過程で(A)consultと(C)speakは自信をもって候補から外せました。
和訳してから文の意味に合う単語を選ぼうとすると、(A)から順に当てはめて、
「(A)相談する→(B)話し合う→(C)話す→(D)議論する→(A)相談する…(繰り返し)」
という無限ループに陥るのではないでしょうか?
英語が得意な受験生や帰国子女の皆さんは、直感で(B)のdiscussを選ぶことができますが、恵まれた英語学習環境にない私たちは論理的に正解を導くことが結果的に時間短縮となるのです。
文法/語法問題への対策
私はこの記事を書くために南山大の文法/語法問題を9年分(2008~2016)解いてみました。その結果得られた私なりの対策を以下で皆さんにお伝えします。
1. 問題集は1冊に決めて繰り返す 2. 過去問をできるだけたくさん解く 3. 本番では満点を狙わない(8割で上出来!!) |
1. 文法・語法問題集は1冊に決めて繰り返す
使用する問題集は周りの受験生が使っているもので、レイアウトや解説が自分の好みに合うものを選べば良いでしょう。
学校で指定されたものが手元にある場合は、新しく買わないでそれを活用しましょう。疑問が湧いたらすぐに友人や先生に質問することができるからです。
心に留めておいて欲しいのは、問題集を完璧にしても、試験本番で満点はなかなか取れないということです。なぜなら、南山英語では例題1や例題2のような、問題集では扱われない知識が必ず出題されるからです。
2. 過去問をできるだけたくさん解く
1.で選んだ問題集を一通り終えたら、南山大学の過去問に挑戦しましょう。
始めは1問解くごとに問題集の索引で同様の問題が載っていないか確認してみましょう。すると、問題集に載っている知識では正解に辿り着けない問題が出題されていることに気づきます。そのような問題は、辞書や文法書で調べてみましょう。
問題をこなしていくうちに、南山大学の出題パターンが見えてくると思います。
→文法/語法問題ゼミでは南山の出題パターンを16に分類して解説。それぞれの類題も載せています。
3. 本番では満点を狙わない(8割で上出来です)
酷な言い方かもしれませんが、皆さんが試験本番で20問すべてに正解するのは難しいでしょう。
逆に、出題する側もそんなことを期待していません。なぜなら、平均的な受験生に満点が取れる出題では選抜試験の意味をなさないからです。
本番では8割(16問)も取れれば十分です。
20問正解するよりも重要なことは、
文法/語法問題で時間を奪われずに、長文読解問題に割く時間を確保することです。
なぜなら、
長文読解問題は難問もなく、時間をかければ全問正解が狙えるからです。
では、どうやって難問を見分けるのでしょうか?
実は、その為の1.(問題集は1冊に決めて繰り返す)であり2.(過去問をできるだけたくさん解く)であるのです。
まず、問題集を1つに決めて繰り返すことで
自分の見たことがない問題=他の受験生もほぼ知らない問題
と判断できます。また、過去問演習を通じて南山大の出題パターンを知ることで以下のような思考を辿ることができます。
「おっと、難問のパターンだぞ…」
→「周囲も難しいと感じているはず!」
→「解けなくても差はつかないぞ!」
→「時間をかけずに選択肢を選ぼう!」
結果:◎長文読解問題の解答時間確保に成功!!
まとめ
2016年度の一般入試で、南山大の中でも難関と呼ばれる外国語学部英米学科の合格者最低点は374.00点です。これを得点率に直すと74.8%です。つまり、
2割5分は間違えても合格は可能
なのです。
繰り返しになりますが、長文読解問題は内容が読み取れれば全問正解も可能です。効率的に文法/語法問題対策を行い、長文読解や他教科に時間を割くことを心がけましょう。
→長文読解はキーワード読解法で全問正解を目指します。