英文挿入問題への対策
南山の長文読解問題では、英文を本文中に挿入させる問題(英文挿入問題)がたびたび出題されます。
すべての日程で出題されるとは限りませんが、2017年には英米学科・総合政策学部を除くすべての日程で出題されました。2016年には英米学科・総合政策学部でしか出題されなかったので、準備を怠った受験生は本番で戸惑ったことでしょう。
2018年には3日程で出題されました。
『英文挿入問題』出題学部 2016年 ■外国語学部(英米学科) 総合政策学部(2/13) 2017年 ■外国語学部(フランス学科, アジア学科) 経済学部 (2/9) ■人文学部(心理人間学科, 日本文化学科) 理工学部 (2/10) ■人文学部(キリスト教学科, 人類文化学科) 外国語学部(スペイン・ラテンアメリカ学科, ドイツ学科) 経営学部 (2/11) ■法学部・国際教養学部 (2/12) 2018年 ■外国語学部(フランス学科, アジア学科) 経済学部 (2/9) ■人文学部(心理人間学科, 日本文化学科) 理工学部 (2/10) ■外国語学部(英米学科) 総合政策学部(2/13) |
この英文挿入問題、出題の歴史は長いものの、日程によって出題されたり、されなかったりしてきたので、受験生は特別な対策をすることもなかったのではないでしょうか?しかし『キーワード読解法』で段落ごとの内容を把握しながら解いていけば、得点源にすることも可能です。
1段落読むごとにタイトルをつけておこう
この講座では「1段落読み終えるごとに1問ずつ解いていく」ということを勧めています。これは内容真偽問題の正解根拠文が、1段落の中にすべて含まれていることに起因しています。
ところが、英文挿入問題を解くには本文全体の内容を把握していなければ解けません。たった1問を解くために本文を読み返す時間的な余裕はありませんが、段落の内容を表すタイトルをつけておくことで英文挿入問題に対応することができます。
それでは、例題を使って実際に解いてみます。例題は以下のものを使用しますので、各自参照してください。
大学受験パスナビ(外部サイト)
2017年南山大学過去問[人文学部(キリスト教学科、人類文化学科)・外国語学部(スペイン・ラテンアメリカ学科、ドイツ学科)・経営学部]
英文挿入問題の解き方
1.英文挿入問題があるか確認する
長文読解問題に取り掛かる前に、設問の最後に英文挿入問題があるかどうか確認しておきましょう。英文挿入問題は問27のような感じで出題されます。
問27. Choose from [A] to [D] the most appropriate place in the passage in which to include the following sentence : (訳)次に述べる文が文中に入るべき最適な場所を[A]から[D]の中から選びなさい。 “Slowing down doesn’t dull the world. It makes it sharper. It makes it crisper. That’s what walking does,” Salopek says. (訳)「ゆっくり進むことは世界を鈍らせるものではありません。よりくっきりさせるのです。より鮮明にします。歩くことによって得られるのはそういうことなのです」とサロペックは語る。 (A) [A] (B) [B] (C) [C] (D) [D] |
2.1段落を読むたびに段落にタイトルをつけておく
英文挿入問題の存在を確認したら、内容真偽問題を順に解いていきます。このとき、1段落読むごとに内容を端的に表すタイトルをつけておきます。タイトルをつけるのは内容真偽問題を解いた後が良いでしょう。そのほうが段落の内容が頭に入っているからです。
-南山長文読解問題の解き方5- 英文挿入問題がある場合は、段落内容を表すタイトルをつけておこう |
段落タイトルは、本文の論理的な流れを把握することが目的なので適当で構いません。要は、英文挿入問題を解くときに段落内容が把握できればよいのです。
私が問題を解きながら段落につけたタイトルは以下の通りです。
段落タイトル(例) 第1段落「ポール・サロペックの旅行計画」 第2段落「スポンサー/記事の投稿」 第3段落「歩くことの利点/自動車生活のへい(弊)害」 第4段落「先人ローリー・スチュワートの経験と主張」 第5段落「スロージャーナリズムが伝えるもの」 第6段落「サロペックの今後」 |
3.挿入するべき英文の分析をする
内容真偽問題を解き終わったら、いよいよ英文挿入問題に取り組みます。
まずは挿入すべき英文を分析します。ここからどんな情報を引き出せるかが腕の見せ所です。
与えられる英文の役目には、筆者の主張である場合、主張を裏付ける例を挙げている場合、既存の常識に対する疑問を呈している場合など様々なパターンがあります。
与えられた例文の和訳も大事ですが、挿入される英文がもつ役割を理解することが場所を選ぶ際に重要です。
あらためて挿入するべき英文を見てみましょう。
“Slowing down doesn’t dull the world. It makes it sharper. It makes it crisper. That’s what walking does,” Salopek says.
(訳)「ゆっくり進むことは世界を鈍らせるものではありません。よりくっきりさせるのです。より鮮明にします。歩くことによって得られるのはそういうことなのです」とサロペックは語る。
‘Salopek says‘という部分から、この一文はサロペック氏の主張(=意見)であることが分かりますね。
その主張の内容は、
「スピードを緩めることは世界をdull(鈍く)するものではない。それは世界をよりsharp(はっきり)にする」
ということです。
つまり「敢えてゆっくり活動することで得られるものがある」という主張なのです。これが与えられた英文の役割です。
この主張を[A]~[D]のどこに挿入するのが相応しいか、段落タイトルを見ながら考えるのが次のステップです。
4.段落タイトルから挿入場所の見当をつけて当てはめてみる
「敢えてゆっくり活動することで得られるものがある」という主張から「『ゆっくり活動すること』に関して記述されている段落を探せば良いのでは?」という方針を立てて、段落タイトルを見渡してみます。
段落タイトル(例) 第1段落「ポール・サロペックの旅行計画」 第2段落「スポンサー/記事の投稿」[A] 第3段落「歩くことの利点/自動車生活のへい(弊)害」[B] 第4段落「先人ローリー・スチュワートの経験と主張」[C] 第5段落「スロージャーナリズムが伝えるもの」[D] 第6段落「サロペックの今後」 |
すると、第5段落に「スロージャーナリズムが伝えるもの」とあります。
「スロージャーナリズム=腰を落ち着けて取材すること」ということです。挿入するべき英文には本文全体を包括するような主張が込められていることから、第5段落末尾の[D]に見当をつけて直前を読み返してみます。すると、末尾にこんな一節があります。
Such a viewpoint, Salopek suggests, says nothing about the world but everything about the questioner’s lack of imagination. [D]
(訳)サロペックは述べている。そのような見方はこの世界について何も語っておらず、質問者の創造性の欠如についての全てを物語っているのである。[D]
Such a viewpointとはその前にある“Isn’t it boring to walk?”(歩くのって退屈じゃない?)という考え方です。この否定的な意見に対する主張として、与えられた英文がピッタリですね。2つの文を繋げてみましょう。
[第5段落末尾] サロペックは述べている。そのような見方はこの世界について何も語っておらず、質問者の創造性の欠如についての全てを物語っているのである。 [与えられた英文] 「ゆっくり進むことは世界を鈍らせるものではありません。よりくっきりさせるのです。より鮮明にします。歩くことによって得られるのはそういうことなのです」とサロペックは語る。 |
ゆっくり進むことに対する批判に反論し、自説を主張しています。論理的に自然につながっていますので、これが正解です。
まとめ
英文挿入問題の正答率はおそらく低いでしょうから「解ければ儲けもの」ぐらいの気持ちで気楽に取り組んでください。
1段落読むごとにタイトルをつけておけば、解答に要する時間もそんなにかからないでしょう。
入試まであと5カ月です。出来るだけ多くの過去問を解きながら実戦で使えるよう、自分のものにしてください。
-南山長文読解問題の解き方5- 英文挿入問題がある場合は、段落内容を表すタイトルをつけておこう |